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2022.07.29

「養育費を確実に回収したい」と思ったら

養育費を確実に回収したいと思ったら何をすべきか

別れた元夫から養育費を確実に回収したい。

そのようにお考えだけれども何をどうすればよいのかわからないと思っている方は多いのではないかと思います。
この記事では、養育費の回収方法の概要をお伝えしたのち、回収のために大事なポイントをご説明いたします。


養育費を確実に回収するために考えられる方法

①養育費の一括払いや人的物的担保の提供等

養育費を相手方から確実に回収したいのであれば、相手方からその総額の一括払いを受けることが端的な方法といえます。
ほかにも、養育費に関して銀行等の金融機関を受託者とする信託制度を利用するというのも確実に養育費を獲得できる方法の一つと考えられます。
また、養育費の支払に関して相手方の資産に抵当権を設定したり、相手方の親族に保証人になってもらうなどの担保を受けることも回収可能性を高めるものになります。

もっとも、一括払いや信託制度の利用は、相手方に相当額のまとまった金額の資産があることが前提であり、人的物的担保の提供は、担保に供される財産の所有者や保証人になる人物との間で合意ができることが大前提となります。
おそらく、上記各方法が実現できる状況にある方はこの記事をご覧になる必要はない方と思われ、検索の結果この記事をご覧になっている方は、諸般の事情から上記の各方法のいずれもとれない方であろうと思われます。

②履行勧告・履行命令制度の利用

相手方との養育費に関する取り決めが、家庭裁判所の調停や審判、人事訴訟(離婚訴訟における判決や・和解)で定められた場合、裁判所に対し、相手方に対して義務履行の勧告(家事事件手続法289条)や義務履行の命令(同法290条)を発するよう求めることも可能です。
もっとも、どちらの制度も、あくまで裁判所から相手方に対して義務履行の勧告や命令をするにとどまる制度ですから、相手方が以後も義務の履行に応じない場合、養育費を確実に回収するという観点からは必ずしも効果が高いとはいいがたい面があります(履行命令については、義務者が命令に従わない場合に10万円以下の過料に処せられる可能性がありますが、過料が科せられるかは家庭裁判所の判断次第ですので、その点も確実というわけではありません。)。

もちろん、履行勧告等も、低廉なコストで回収を実施できる可能性がある点や裁判所からの公的な督促であることからご自身で督促するよりも強いプレッシャーをかけることが期待できる点などメリットはありますが、相手方に対して強制的に養育費の支払を求める場合には、地方裁判所において強制執行の手続をとる必要があります。

③強制執行の申立て

強制執行は、執行力のある債務名義がある場合にとることが可能です。
具体的には、その条項や主文に給付命令が含まれ、内容が特定されている調停調書、審判や判決、執行証書(公正証書のうち執行力のあるもの)が債務名義に含まれます。

したがって、例えば、お手元に、相手方に養育費の支払について具体的に取り決めた調停調書がある場合、通常は、執行力のある債務名義を持っているということになります。
一方、裁判所外で、夫婦間の養育費の取り決めを公正証書にしたものについては、「毎月末日限り●●円を●●の方法で支払う。」というように明確な内容の給付文言があり、かつ、相手方が義務を履行しないときは直ちに強制執行に服することを認める旨の強制執行認諾文言が書かれていなければ、執行力のある債務名義とは認められないおそれがあることには注意が必要です。


次に、養育費を回収する際の強制執行の方法としては、間接強制直接強制の方法があります。

間接強制は、義務者が月々の養育費の支払に応じない場合に、裁判所が命じた間接強制金を支払わせるという方法で、間接強制金の制裁のもとに養育費の支払を実現しようとするものですが、もともと相手方が任意の支払に応じないことで紛争に至っているため、実際上は、直接強制の方法を選択して回収を図ろうとする方が大多数なのではないかと思われます。

直接強制は、前記の債務名義に基づいて義務者の財産などを差し押さえる方法で、例えば、義務者の持つ金融機関に対する預金債権や勤務先に対する給与債権を差し押さえ、権利者が、金融機関や勤務先から養育費の弁済を受けようとするものです。

その中でも、給与債権などの継続的に給付を受ける債権を差し押さえる場合は、1回の申立てで、支払のない当月分のみならずまだ弁済期の来ていない翌月分以降の分も対象にして執行を開始できるとされていたり(「予備的執行」と言われます。民事執行法151条の2)、差押えができる部分が、義務者が「支払期に受けるべき給付」の「二分の一」にまで拡張されている点(同法152条)で有利であるため、養育費について強制執行をすると言った場合、一般的には相手方の給与債権を差し押さえようとする方が多いでしょう。


回収のために大事なポイント

以上のとおり、養育費を相手方から確実に回収しようと考えた場合、強制執行手続をとることが有益です。

しかし、上記でも触れたとおり、強制執行を行うためには「執行力のある債務名義」を有していることが必要です。
つまり、裁判所での取り決めによってできた調停調書、審判書、判決や和解調書等の書面か、強制執行認諾文言が内容に含まれている執行証書がなければ、スムーズに強制執行をしようと思ってもできません。

したがって、養育費を確実に回収しようと思ったら、まずは執行力のある債務名義を取得することを第一に考える必要があるとお考え下さい。

ちなみに、養育費の満足を受けようとした場合に、相手方から回収する以外の方法として、市町村や民間企業等が行う養育費の立替事業の利用をすることも考えられますが、その場合も、利用者が執行力のある債務名義を有していることが事業を利用するための要件となっているのが通例です。

ですから、養育費の不払いを防ぐという点をお考えであれば、まずは、適切な内容・方法の養育費の取り決めをしっかりと行うことをお考えいただくべきと思います。

なお、当事務所がある明石市では、「養育費取り決めサポート事業」というものがあります。
このサポート事業の一つには、調停調書や公正証書の作成にかかる費用(裁判所や公証役場に支払う手数料)全額を市が補助するというサービスもあります(サービス適用には条件がありますので、詳細は市のホームページをご確認ください。)。


「相手方が公正証書の作成に応じず話が前に進まない。」などのお悩みを抱えている方も多いかと思われますが、その場合には、弁護士を通して相手方を説得して債務名義を取得することをお考え下さい。また、公正証書や調停調書等の作成をするに当たり、わからない点や注意すべき点について知りたいという方は、お早めに弁護士にご相談ください。

当事務所の弁護士渡邉友は離婚事件に関し多くの案件に携わってきましたので、将来の回収の点も含めた適切な内容の養育費の取り決めについてサポート差し上げることが可能です。
養育費の点でお悩みの方はあかし興起法律事務所の弁護士渡邉友にお早めにご相談ください

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