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2022.10.04

どの程度の証拠があれば不貞行為が認められるか

はじめに

離婚に関するご相談を受ける中で

「どの程度の証拠があれば不貞行為が認められますか?」

というご質問をよく受けます。

ご自身の判断で証拠集めをして他方の配偶者をうまく追及できた方もいらっしゃると思いますが、そうでない方や今現在証拠集めに奔走され、悩みを抱えていらっしゃる方もいると思います。

今回は、どの程度の証拠があれば不貞行為が認められるかというポイントで掘り下げてみようと思います。


不貞行為とは

不貞行為とは、一般的には、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。
ここでいう「性的関係」とは、性交、性交類似行為をすることを指し、そこまでに至らない、一緒に食事をする、ハグをする、キスをするというような行為が認められたとしても、それのみでは法的には「性的関係」を持ったとは認められません。

そして、不貞行為の事実が認められた場合、不貞をした配偶者や不貞相手は、他方配偶者に対して不法行為責任(民法709条)を負い、それによって精神的苦痛を被った他方配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負う可能性があります。

不貞行為を立証するための証拠について

配偶者に言い逃れができないような証拠を集めて不貞行為を追及したいと思ったときに、

➀ 不貞行為の事実を直接立証できる音声や映像

という強い証拠が手に入っている場合には、立証にさほど困難は予想されません。

しかし、不貞行為は密室で行われるのが通常であるため、この事実を直接立証できるこのような証拠が手に入るのは稀な場合が多いであろうと思われます。

通常、配偶者の不貞行為が疑われる場合に他方配偶者が収集の結果得られた証拠としては以下のようなものが多いと思います。

② 不貞行為を疑うような事実(帰宅が遅い、外泊が多い、朝帰り、避妊具を持ち歩いている、ラブホテルのポイントカードを持っているなど)

③ 特定の女性とのメールやメッセージアプリ等での親密な(肉体関係の存在を推認させる)やり取りがある

④ 探偵等の調査によって配偶者が女性とラブホテルやビジネスホテルに滞在、宿泊していたことが判明した

⑤ 不貞の現場に突撃したり、当事者を呼びだしたりして得た不貞をした配偶者や不貞相手の自白




上記の➀~⑤の中で、➀はレアケースとして検討対象外にするとして、②~⑤の全ての証拠を収集できたという方もいるでしょうし、一部しか収集できていないという方もいるでしょう。


では、どの程度の証拠があれば、不貞行為が認められるのでしょうか、本題に入りましょう。


どの程度の証拠があれば不貞行為が認められるか

⑴ 訴訟の場合を例に

例えば、訴訟で不貞慰謝料を請求する場合、請求する側の原告は、被告の不貞行為の事実について証拠を持って具体的に証明をする責任を負います。
ですから、不貞事実を認めるに足る十分な証拠がない場合、いかに被告が疑わしくとも、裁判所が不貞行為の事実があったとは認めてくれないということも、残念ながらあり得ます。

したがって、例えば、

②不貞行為を疑う事実しか証拠がないという場合

②の証拠に加えて③メール等のやり取りの証拠があったとしても、メール等の内容から肉体関係の存在が推認できない場合

などは、それらの証拠のみをもって不貞行為の事実を裁判所が認めるということは難しいと思われます。




一方で、②の不貞行為を疑う事実という証拠に加え、③~⑤のいずれかがあれば、通常の場合、不貞行為の存在が推認され(当然ながら、➀の証拠がある場合にはその事実から直ちに不貞行為の存在が認められる、あるいは、他の証拠と併せてより強く推認されるということになります。)、裁判所は、不貞が疑われる側から合理的な反証がなされない限り、不貞行為の存在を認める判断を下すのが一般的と考えられます。

そして、「合理的な反証」に関しては、既に不貞行為の存在が推認できるような証拠が認められる場合には、よほどのことがない限り、不貞行為はなかったという反論が訴訟で認められることはないと思われます。

したがって、訴訟をしてでも慰謝料を取るのだ、とお考えの方の場合には、一つの考え方として、②の証拠に加え、③~⑤のいずれかの証拠を手に入れること、を念頭に証拠の収集を検討されればよいと思います。

ここで、「一つの考え方として」と敢えて述べた点については、以下の「⑶ 注意点その2」で説明します。

⑵ 注意点その1

ただし、②の証拠に加え、③~⑤の証拠のいずれかがあれば大丈夫、ということではありません

そのような場合でも、それらの証拠の内容次第では、不貞が疑われる側から思わぬ反論に遭い、裁判所に不貞行為の事実を認定してもらえなかったり、不貞行為の事実認定以外の問題で最終的に不法行為責任を認めてもらえない結果が生じるおそれもあり得ます。

例えば、➀朝帰りが多いなどの不貞が疑われる事実のほかに、⑤不貞が疑われる配偶者が自白をしたという証拠があったとしても、自白が長時間の威迫の結果得られたものであったり、自白内容が、追及する側の質問にあいまいな返答をするにとどまるものであったりすれば、「⑤の証拠は十分信用できない」として、最終的に裁判所に不貞の事実を認定してもらえないということはあり得ます

また、不貞相手に対して不貞慰謝料を請求する場合、不貞相手が、不貞をした配偶者の夫婦関係が破綻していると認識し、かつそのような認識をしたことに過失がない場合には、不法行為責任を認めるための他の要件が欠けるため、不貞相手に対する慰謝料請求が認められないという結論になる場合があり得ます。
したがって、不貞慰謝料の請求を検討する場合には、不貞行為の事実が認められるか、ということだけでなく、不法行為責任を認めるためのその他の要件も認められるか、ということも併せて検討を進めていく必要があります。

これらの検討は、法的な観点からのものになりますので、弁護士等の専門家の判断を仰ぐことを強くお勧めいたします。

⑶ 注意点その2

⑴では、訴訟の場合を例に挙げ、どの程度の証拠があれば不貞行為の事実を裁判官に認めてもらえるか、という視点から説明いたしました。

ただ、訴訟にまで至らない交渉段階で不貞行為を追及する際に、訴訟の場合と同じ証拠まで必要か、ということについては、立ち止まって考えていただく必要があろうと思います。


特に、探偵等の調査会社に調査を依頼する場合には、人件費等がかさみ調査費用が高額になりがちであり、他方、不貞行為の慰謝料として得られる金銭には限度がありますので、調査を依頼される場合には慎重な検討が必要です。
不貞をした配偶者の性格、これまでの当事者間の関係性及び現時点で収集できている証拠の持つ意味や価値を検討し、より少ない費用で不貞行為の追及という結果を得られるのであれば、それも一つのやり方であろうと思います。

また、そもそも、配偶者に不貞行為が疑われる状況において、もうこれ以上配偶者に連れ添いたくないとお考えの方にとっては、証拠収集によって不貞事実をはっきりさせることや慰謝料を取ることは精神的に疲弊するだけで、相対的に重要でないという場合もあるかもしれません。

不貞事実の解明のための証拠収集に費用をかけすぎたり、解明を図ろうとすることでかえって精神的に疲弊してしまうことが懸念されるような方の場合には、不貞事実の解明のための対応の仕方、あり方についてアドバイス差し上げることが有用かもしれません。

まとめ


本コラムでは、配偶者の不貞行為を追及するに際し、どの程度の証拠があればよいか、というよくあるご質問に対して、私なりの回答を記事にさせていただきました。

ただ、ポイントをまとめて記事にはしたものの、やはり、どの程度の証拠があれば不貞行為の立証ができるか、今ある証拠で立証ができるかということについては、最終的には、それぞれの事案ごとに証拠の内容を検討しなければ判断できないと言わざるを得ない点があることも事実です。

もし、本コラムをご覧の方が不貞行為に関する証拠収集でお悩みを抱えていらっしゃるならば、ある程度ご自分で対応をされたのちでも構いませんし、証拠収集を今から始めるという段階でも構いませんので、離婚、男女問題を数多く扱うあかし興起法律事務所へお問合せください

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